




vol.2
ポケットの社長、大木達哉さん。
電通時代の私の元上司だ。
大木さんは若かりし頃、
三浦友和と山口百恵の結婚のきっかけを作ったCMや
スーパーアイドル田原俊彦と松田聖子の共演CMなど、
中高生に話題になる数々の青春路線ヒットCMを連発
するCMプランナーだった。
部に配属された日のことは、今でも忘れられない。
大木さんは机の上に足を投げ出して考え事をしていた。
挨拶する僕に、
「お前、ゴルフはするのか?」
「いいえ」と答えるとクイ気味に、
「麻雀は?」
「しません」
「・・・そっか・・・、まあ、いいや」
それがはじめての会話だった。
大木さんの魅力をひとことで言うと、
インテリヤクザのかっこよさ。
東大文学部卒は学歴詐称じゃないかと思わせるほどの、
洒落にならないコワモテ感。
決して声高に話すわけでも怒鳴るわけでもないのに、
その存在感は半端じゃなかった。
自分の上司にすると圧倒的に有利。
頼りになるから。
大木さんからはいろんなことを学んだ。
特にタレントの交渉術。
30年前も広告業界にキャスティング会社は存在してい
たが、大木さんは自らの人脈でタレントを口説いていた。
時にクライアントとタレント事務所の思惑は相反する。
その着地のさせ方が絶妙だった。
「クライアントのことをわかっているのは俺たちだ。
だからこそ自分で直接タレント事務所に行って交渉する
クセをつけろ。それがやがてお前の財産になるから」
当時の大木さんの口癖だ。
ポケットの社長、大木達哉さん。電通時代の私の元上司だ。
大木さんは若かりし頃、三浦友和と山口百恵の結婚のきっかけを作ったCMやスーパーアイドル田原俊彦と松田聖子の共演CMなど、中高生に話題になる数々の青春路線ヒットCMを連発するCMプランナーだった。
部に配属された日のことは、今でも忘れられない。大木さんは机の上に足を投げ出して考え事をしていた。挨拶する僕に、「お前、ゴルフはするのか?」「いいえ」と答えるとクイ気味に、「麻雀は?」「しません」「・・・そっか・・・、まあ、いいや」それがはじめての会話だった。
大木さんの魅力をひとことで言うと、インテリヤクザのかっこよさ。東大文学部卒は学歴詐称じゃないかと思わせるほどの、洒落にならないコワモテ感。決して声高に話すわけでも怒鳴るわけでもないのに、その存在感は半端じゃなかった。自分の上司にすると圧倒的に有利。頼りになるから。
大木さんからはいろんなことを学んだ。特にタレントの交渉術。 30年前も広告業界にキャスティング会社は存在してい たが、大木さんは自らの人脈でタレントを口説いていた。時にクライアントとタレント事務所の思惑は相反する。その着地のさせ方が絶妙だった。「クライアントのことをわかっているのは俺たちだ。だからこそ自分で直接タレント事務所に行って交渉する クセをつけろ。それがやがてお前の財産になるから」当時の大木さんの口癖だ。
タレントの交渉は厄介だ。
いちばん厄介なのは誰が交渉するかによって、
タレント事務所の返事が変わる場合があるということ。
たとえ同じ企画でも、だ。
もちろん大木さんが動いてすべてがうまくいくわけ
ではない。
ただ、揉め事や難題を抱えた案件と対峙する大木さんは、
強い。
感情的にならず、冷静で、かつ強引。
力技を兼ね備えたインテリは、最強だ。
人間には問題に直面した時、二通りの人間がいる。
逃げる人間と目を輝かせて嬉々とする人間。
大木さんは確実に後者だ。
そんな社長がいる会社が、ポケット。
ポケットは、きっといいキャスティング会社だと思う。
社員が目指すべき背中が、そこにあるから。
ちなみに大木さんの最近の口癖は、
「山崎、プランナーは企画を考えるのが仕事だろ。
だからキャスティングはキャスティング会社に
任せた方がいいんだよ」
大木さんは、愛すべき勝手な生き物だ。
そしてその勝手さが、不可能を可能にする。
タレントの交渉は厄介だ。いちばん厄介なのは誰が交渉するかによって、タレント事務所の返事が変わる場合があるということ。たとえ同じ企画でも、だ。もちろん大木さんが動いてすべてがうまくいくわけではない。ただ、揉め事や難題を抱えた案件と対峙する大木さんは、強い。感情的にならず、冷静で、かつ強引。力技を兼ね備えたインテリは、最強だ。人間には問題に直面した時、二通りの人間がいる。逃げる人間と目を輝かせて嬉々とする人間。大木さんは確実に後者だ。
そんな社長がいる会社が、ポケット。ポケットは、きっといいキャスティング会社だと思う。社員が目指すべき背中が、そこにあるから。
ちなみに大木さんの最近の口癖は、「山崎、プランナーは企画を考えるのが仕事だろ。だからキャスティングはキャスティング会社に任せた方がいいんだよ」
大木さんは、愛すべき勝手な生き物だ。そしてその勝手さが、不可能を可能にする。
株式会社ワトソン・クリック
クリエーティブ・ディレクター/CMプランナー
vol.1
子どものポケットからは何でも出てくる。
チョコレートの包み紙。せんべいの個装袋。
どんぐり。葉っぱ。
一円玉。ピン留め。
じゃりじゃりの砂。
ポケットティッシュは、ポケットが居場所なのだろうけれど、
ティッシュがビニールから飛び出して、
こすれて、けば立っている。
ポケットをひっくり返して、
「なんで、なんでもかんでも入れとくの?」と
子どもに聞くと、
「知らない」と答える。
ポケットは、子どもの手からなんでもかんでも
飲み込んでしまう。
ポケットの中に宇宙が広がっているのは、
ドラえもんの四次元ポケットだけじゃない。
子どものポケットからは何でも出てくる。チョコレートの包み紙。せんべいの個装袋。どんぐり。葉っぱ。一円玉。ピン留め。じゃりじゃりの砂。
ポケットティッシュは、ポケットが居場所なのだろうけれど、ティッシュがビニールから飛び出して、こすれて、けば立っている。
ポケットをひっくり返して、「なんで、なんでもかんでも入れとくの?」と子どもに聞くと、「知らない」と答える。ポケットは、子どもの手からなんでもかんでも
飲み込んでしまう。
ポケットの中に宇宙が広がっているのは、ドラえもんの四次元ポケットだけじゃない。
ポケットという会社と、
『嘘八百』という映画を作った。
代表の大木さんは、コワモテだけどロマンティスト。
なにせ自分の会社に「ポケット」なんて
名前をつけちゃう人だから。
お酒は飲めないけれど、甘いものはイケる。
ロケ地を求めて堺市内を回り、
回転寿司屋を見ようかという話になったとき、
「いいですねー回転寿司。行ったことないんですよ」
と言うので、のけぞった。
『嘘八百』は、さびついた腕を奮い立たせて
幻の利休の茶碗をでっち上げ、
一発逆転、一攫千金をもくろむ男二人の話。
「茶碗は口こそ小さいですけど、
中に大海原を描くように作りなさいと教わりました」
取材で会った堺の陶芸家さんの言葉から、
利休の茶碗に大海原のイメージを重ねた。
茶碗の中には、大海原が広がっている。
ポケットの中には、宇宙が広がっている。
そのポケットから、次は何を出しますか。
ポケットという会社と、『嘘八百』という映画を作った。代表の大木さんは、コワモテだけどロマンティスト。なにせ自分の会社に「ポケット」なんて
名前をつけちゃう人だから。お酒は飲めないけれど、甘いものはイケる。ロケ地を求めて堺市内を回り、回転寿司屋を見ようかという話になったとき、「いいですねー回転寿司。行ったことないんですよ」と言うので、のけぞった。
『嘘八百』は、さびついた腕を奮い立たせて幻の利休の茶碗をでっち上げ、一発逆転、一攫千金をもくろむ男二人の話。「茶碗は口こそ小さいですけど、
中に大海原を描くように作りなさいと教わりました」取材で会った堺の陶芸家さんの言葉から、利休の茶碗に大海原のイメージを重ねた。
茶碗の中には、大海原が広がっている。ポケットの中には、宇宙が広がっている。
そのポケットから、次は何を出しますか。